日本とタイの「エネルギー産業対話」が始動、企業間提携も多数

 

東南アジア株式新聞 2025年4月30日

日本とタイの「エネルギー産業対話」が始動、企業間提携も多数

日本の首相がベトナムとフィリピンを訪問している頃、通商担当大臣はマレーシアとタイを訪れていた。


4月29日、タイを訪問していた武藤容治経済産業相は、日タイ間経済閣僚による「エネルギー・産業対話(Energy and Industry Dialogue)」を立ち上げることについて、ピチャイ副首相兼財務相らと合意し、第1回会合を開いた。

その成果としては(すでに日本企業が多く進出している)自動車産業の分野での協力案件を中心に共同声明に書き込まれた。


もう1つ、武藤大臣には重要なミッションがあった。日本が提唱している「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」について取り組みを継続していくことについて合意の確保だ。

武藤大臣はタイの前に、マレーシアに立ち寄り、ザフルル投資貿易産業相と会談し、タイでは、ピーラパン副首相兼エネルギー相と会談した。


その2つで、「エネルギー・産業」の2国間対話を強化した形になった。


ところで、エネルギー・産業対話の会合の傍らで、自動車以外の産業も含めた多数の、日タイ企業間の提携について覚書(MOU)リストが発表されている。

  
経済産業省サイトより、2025年4月29日
経済産業省サイトより




経済産業省サイト、4月29日付けのプレスリリース:

武藤経済産業大臣がマレーシア及びタイ王国に出張しました


武藤大臣のタイ出張の成果として、特筆されているのが以下。


第1回エネルギー・産業対話(タイ王国)

武藤経済産業大臣は、ピチャイ副首相兼財務大臣(共同議長)、エーカナット工業大臣と、産業競争力向上など両国の幅広いトピックを閣僚級で議論する「エネルギー・産業対話」を立ち上げ、第1回対話を開催しました。本対話では、自動車産業をはじめとする製造業の生産・輸出競争力の強化に向けて議論を行い、(1)マルチパスウェイの推進、(2)サーキュラーエコノミーの推進、(3)競争力あるサプライチェーンと人材の健全な維持・発展について、具体的な協力の方向性を記した共同声明を発出しました。


共同声明:Joint Statement of the Energy and Industry Dialogue

武藤大臣とピチャイ副首相が共同議長を務める。

さっそく第1回エネルギー・産業対話の成果が3点、共同声明に書き込まれている。

  • Promotion of Multi-Pathway

  • Promotion of Circular Economy

  • Maintaining and Developing a Competitive Supply Chains and Human Resources (Including Support for SMEs)


マルチパスウェイの推進

EV、FCEV、HEV、ICE などの多様な車両に対する世界的な需要を認識し、タイが次世代自動車の 生産・輸出拠点となることを促進するために「マルチパスウェイ」の概念に基づいた政策を推進する。

(マルチパスウェイは、どのタイプの車が主流になろうとも生き残るための自動車産業の戦略という意味で、トヨタ自動車などが使っている)

 

サーキュラーエコノミーの推進

これも基本的に自動車産業での協力。老朽化した自動車の適切な時期での廃車およびリサイクルを促すエコシステムの確立を進めること、など。


競争力のあるサプライチェーンと人材の維持・発展(中小企業への支援を含む)

次の事柄に関する両国のコミットメントを確認:

  1. 次世代技 術、サーキュラーエコノミー、サプライチェーン全体での脱炭素化などの重要な分野における人材育成を引 き続き推進する

  2. 裾野産業への利益を考慮しつつ、日本とタイの官民が連携しながら、サプライチェーンの強靱性を引き続き強化する

  3. 産学官の緊密な 協力を通じて、産業のニーズに合ったトレーニングカリキュラムを調整する重要性を引き続き強調 する



今回発表された日タイ企業間の提携話は経済産業省サイトから見られる。


経済産業省の日タイ企業間MOUリスト:

MOU案件リスト一覧 (エネルギー・産業対話と同時開催)


  • いすゞ自動車、トリペッチいすゞセールス、V. Cargo社による タイにおけるバッテリー交換式EVの共同実証検討に関する覚書

  • 三菱自動車タイランドとキングモンクット工科大学との xEV技術者人材育成に関する覚書

  • 東レ社とPTTグローバルケミカル社の 非可食バイオマス由来ナイロン原料の量産技術検討に関する覚書

  • 持続可能な未来のための協働覚書の締結:CPG & Kao

  • タイCPグループと三菱電機、環境価値提供に向けた包括的協力に関する覚書締結

  • ゼロボードとロジャナ工業団地の脱炭素に関する覚書

  • ココペリとOSMEPの海外ビジネスマッチングに関する覚書

  • 株式会社ExtraBoldとTAISEI (THAILAND) CO., LTD覚書

  • AOTSとTPA、TNIとの産業人材育成等相互協力覚書


このうち、花王とCPG(チャロン・ポカパン・グループ)の提携話は「持続可能な未来のための協働」という漠然としたタイトルが付いているが、「サステナビリティを前面に据えた新しいハウ スブランドを共同開発。2025年に新洗剤を発売」と、すでに具体的な中身もある。


CPGと三菱電機の提携は、「三菱電機が日本で培った高度プラスチックリサイクル技術と家電リサイクルを実現 するための持続可能な仕組み作りの経験と、CPグループが有する事業基盤を活かし、 タイにおけるプラスチックリサイクル事業の実現可能性を検証」する、と言う。


最後の、AOTSは、一般財団法人・海外産業人材育成協会。日・タイ経済協力協会(JTECS)を2025年4月に合併したAOTSがTPA(泰日経済技術振興協会)及びTNI(泰日工業大学)と産業人材育成等で協力していくと言っている。




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