IMF 予測下方修正:アジア新興・途上国の2025年成長率は0.6%㌽低下
東南アジア株式新聞 2025年4月23日
IMF 予測下方修正:アジア新興・途上国の2025年成長率は0.6%㌽低下
4月22日に国際通貨基金(IMF)が世界経済見通し(World Economic Outlook)2025年4月版を発表した。
1月版以来の改訂で、注目点は、IMFがトランプ関税の影響をどう見たかだった。
以下のような記事をいろんなメディアで見かけた。
2025年の世界成長率0.5ポイント下げ IMF予測、米国にも関税が打撃 - 日本経済新聞
国際通貨基金(IMF)は22日、2025年の世界の成長率見通しを前回1月時点の予測から0.5ポイント下げて2.8%とした。トランプ米政権の高関税政策の影響ですべての地域が下方修正で総崩れとなった。米国自身への打撃も重さが際立つ。「世界景気悪化」の目安となる2%割れも3割の確率で起きうると警鐘を鳴らした。
2024年の世界のGDP成長率は3.3%。それが今年2.8%となる予測だ。2%割れする確率が3割と聞くといやな感じだ。
ただ、このブログの関心はASEAN諸国が含まれる「アジア新興・途上国(Emerging and Developing Asia)」地域だ。
同地域では少し高めの成長率予想が維持されることを期待して、4月版を読んでみよう。
世界経済見通し2025年4月版「政策転換の重要な局面」:
World Economic Outlook, April 2025: A Critical Juncture amid Policy Shifts
主要な政策転換が進むにつれ、世界経済の成長は鈍化し、下振れリスクが高まると予想される。
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IMF WEO 2025年4月版データより作成 |
「アジア新興・途上国」の2025年は4.5%。1月予測より0.6ポイント下げられた。
同地域の成長率修正幅は、米国の0.9ポイント下げよりはましだが、中国と同程度の下げ幅になると、IMFは予測したことになる。
(中国に課された関税は145%。東南アジアのベトナム、ラオス、カンボジアが40%台)
IMFの分析では、トランプ関税により米国が最もダメージを受ける。関税は米国への輸入品にかかるため、米国経済が痛むのは納得できるが、その他の国については事情が複雑だ。
同時に公表されたブログで、米国の関税政策と政策の予測不可能性についての分析の解説をしている。
IMFのブログ「グローバル経済は新時代に入った」:
The Global Economy Enters a New Era
(前略)
米国では、政策の不確実性の高まりを反映して、最近の政策発表以前から需要は既に軟化していた。4月2日時点の参考予測では、今年の米国の成長率予測を1.8%に引き下げた。これは1月より0.9%ポイント低い数値で、この低下のうち0.4%ポイントが関税によるものだ。また、米国のインフレ率予測も2%から約1%ポイント引き上げた。
貿易相手国にとって、関税は主にマイナスの需要ショックであり、一部の国が貿易転換の恩恵を受けるとしても、外国の顧客を自国製品から遠ざける。このデフレの傾向に沿って、我々は今年の中国の成長率予測を0.6%ポイント下げて4%とし、インフレ率は約0.8%ポイント下方修正した。
(中略)
グローバルサプライチェーンの高密度化は、関税と不確実性の影響を増幅させる可能性がある。貿易財の多くは、最終製品となるまでに複数回国境を越える中間投入物だ。パンデミックの際に見られたように、混乱はグローバルな投入産出ネットワークの上下に波及し、大きな乗数効果をもたらす可能性がある。不確実な市場アクセスに直面している企業は、短期的には活動を休止し、投資や支出を削減する可能性が高いだろう。同様に、金融機関は借り手のエクスポージャーを再評価するだろう。不確実性の高まりと金融環境の引き締まりは、短期的には経済活動を圧迫し、原油価格の急落に反映されているように、経済活動を圧迫する可能性がある。
(以下略)
「グローバルサプライチェーンの高密度化」が関税の波及効果を見えにくくしている。
グローバル企業が関税効果の緩和のため生産拠点を別の国へ移動すると、それぞれの国に影響が出るが、どの企業がいつどこへ動かすかも予想できない。
IMFばかりではないが、GDP成長率予測の精度は落ちていると考えたほうがよいだろう。
最後に、IMF 世界経済見通し 4月版のデータからASEAN10のGDP成長率を見ておこう。
高関税率を課されているベトナム、ラオス、カンボジアの成長率が急激に低下する
ASEAN唯一の先進国・シンガポールも厳しい数字だ
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IMF WEO 2025年4月版より作成 |
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