東南アジアの太陽光発電パネルメーカーに別の米国関税
東南アジア株式新聞 2025年4月22日
東南アジアの太陽光発電パネルメーカーに別の米国関税
米商務省が4月21日に東南アジアの太陽光発電セルのメーカーに対する調査結果を発表した。
中国から補助金を得て、ダンピング価格で対米輸出していたメーカーに対する調査だ。
対象メーカーの多くは、中国系メーカーがマレーシア、カンボジア、タイ、ベトナムに工場を作って、そこから米国へ輸出しているパターンだ。
米国基準から見たダンピング(意図的な低価格販売)であるため、たいていは実際に中国から補助金が出ているわけではないだろうが、それらの企業には、米国から懲罰的な関税が課される可能性が出てきた。
それら東南アジア諸国は、トランプ相互関税で高い税率を示されている(最低のマレーシアでも24%、カンボジアとベトナムは40%台)。
米国との関税交渉の準備を進めている各国政府は、トランプ大統領の裁量ではなく、商務省の通常プロセスで出現した別の関税にも悩まされることになった。
The Edge Malaysia の4月22日の記事:
米国、マレーシアと東南アジアからの太陽光発電輸入に新たな関税を課す
US imposes new duties on solar imports from Malaysia, Southeast Asia
マレーシアとその隣国であるカンボジア、タイ、ベトナムから米国に輸出される太陽電池には、高額の反ダンピング関税が課せられる。
マレーシアの税率は東南アジア4カ国に対する反ダンピング関税および相殺関税(CVD)のうち8.59%で最も低い。しかし、マレーシアに拠点を置く一部の企業は、調査に協力しないため、81.24%もの高関税を課せられている。
(中略)
この決定は、東南アジアに生産工場を持つ中国メーカーが米国で大量の太陽光発電製品を不当廉売していると訴えた the American Alliance for Solar Manufacturing Trade Committee による昨年の訴訟をめぐる調査を受けて行われたものである。
同業界団体は、中国の太陽光発電メーカーがサプライチェーンを変更し、製品をカンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム経由で出荷することで太陽電池と太陽光パネルへの関税を回避し、不公正な貿易慣行を行っていると非難した。
(中略)
ただし、関税は依然として米国の別の機関である国際貿易委員会の決定に左右される。商務省が関税を施行する前に、同委員会は2025年6月2日までに最終的な損害判定を下す必要がある。
米商務省・国際貿易局(International Trade Administration)の4月21日のニュースリリース:
本日、米国商務省は、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム社会主義共和国(ベトナム)産の結晶系太陽光発電セル(太陽電池)に対する反ダンピング関税(AD)および相殺関税(CVD)調査で最終的な肯定的決定を発表した。
商務省は、透明性のある調査手続きを通じて提出された事実に基づき、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムからの太陽電池の輸入が米国市場にダンピングされており、以下の図に示す平均率で相殺可能な補助金(countervailable subsidies)を受けていると判断した。
カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムを対象としたCVD調査において、商務省は各国の企業が中国政府から補助金を受け取っていたことを発見した。これらは、企業が国境を越えた補助金を受け取っていたことを商務省が肯定的に認定した最初の CVD 調査の 1 つである。
独立した機関である国際貿易委員会(ITC)は、2025年6月2日までに最終的な損害判定を下すことになった。 ITC が国別の最終的な損害判定を肯定的に行った場合、商務省は上記の料率で AD および CVD 命令を発令する。 ITC が否定的な決定を下した場合、命令は発行されない。
国際貿易局サイトの以下のページに、個別企業のダンピング率と中国からの補助金比率が掲載されている。
最終判定
上記 Edge Malaysia の記事にある通り、調査に協力しなかった企業については、とんでもない比率の中国からの補助金を推定している。
調査に協力したマレーシア企業は、補助金比率が14%や38%と理解できるレベルの数字が付与されている。
これに対し、調査に協力しなかったカンボジア企業には、3,403.96% という非常に大きな数字が付けられている。
素直に読めば、採算が合わないダンピング価格で米国へ輸出すれば輸出品価格の34倍もの補助金が中国から得られた、と言っているようだ。
米国政府はこの数字を基に、高い関税を課す流れになっている。
米国からの報道によると、「カンボジアの企業は米国の調査に協力しなかったため、カンボジア産の製品は3,521%という最も高い関税が課せられる。一方、中国メーカーのジンコソーラーがマレーシアで製造した製品には41%強の関税が課せられる。ライバルであるタイのトリナソーラーの製品には375%の関税が課せられる。」(Guardian)
まだ関税の税率はまだ最終決定ではないし、トランプ政権との関税交渉の中でどんなディール(取引)ができるかもこれからのことだ。
しかし、トランプ政権側が追加の交渉材料を持ったことになるため、東南アジア4か国の政府は苦慮しそうだ。
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