プラボウォ大統領の闘い、金融市場・財政規律・インドネシア富豪層
プラボウォ大統領の闘い、金融市場・財政規律・インドネシア富豪層
東南アジア株式新聞 2026年3月16日
ブルームバーグのインタビュー記事(3月16日配信):
『反骨のプラボウォ氏、インドネシアの大富豪や市場の懐疑論との激しい論争』(仮訳)
がおもしろい。
同氏はスハルト時代に反対派の撲滅に活躍した軍人として有名であるため、
強権的なイメージがついてまわる。また、財政・金融に詳しいかと疑問視される。
そんなことを大統領本人に質問した、新鮮なインタビュー記事だ。
貧困撲滅第一を語る富豪、市場からの誤解か?彼が市場を誤解しているのか?
The Edge Malaysia の3月16日(月)の記事
(中身はジャカルタ・香港発のブルームバーグ電):
Defiant Prabowo spars with Indonesia tycoons and market sceptics
(前略)
土曜日の午後、大統領として初めて国際メディアと行った大規模なインタビューで、
プラボウォ大統領はメモを見ずに、インドネシアの将来像、そしてなぜ市場から誤解されることが多いのか
について、長々と語った。
シェイクスピア、エイブラハム・リンカーン、中国の鄧小平の言葉を引用しながら、
財政均衡と燃料補助金の廃止への意欲から、ジャカルタへの通勤途中の昼寝、そして水泳への愛着へと、
話題を自在に切り替えた。
(中略)
プラボウォ氏は多くの点で矛盾の塊のような人物だ。その象徴とも言えるのが、丘の上に建つ豪邸である。
これは、兵役と政治家としての活動の合間にインドネシアの資源産業で働き、約2兆ルピア(約1億2000万米ドル)
もの巨額の富を築いた彼の財産の一部だ。
彼は、風光明媚なハンバランの土地を、1997年のアジア金融危機で為替レートが急落した後、
米国にいる子供の学費を払えなくなった知人から取得したと語った。
プラボウォ氏は莫大な個人資産を持つにもかかわらず、インドネシアの大富豪たちを非難し、
自らを貧困層の擁護者と位置づけている。
彼は戦場をくぐり抜けてきた兵士であり、平和を望んでいる。
財政規律を提唱する一方で、世界最大規模の無料給食プログラムに巨額の資金を投じている。
そして、ジャカルタの大統領官邸での政治工作よりも活火山に近い私邸から権力を掌握している。
(中略)
最優先事項について問われると、プラボウォ氏はインドネシアにおける飢餓と極度の貧困の撲滅を挙げ、
G20加盟国が家族が十分な食料を得られない状況を放置することは容認できないと述べた。
さらに、官僚機構の改善、国家資産の増大、そして川下産業プロジェクトの拡大も望んでいると語った。
(以下略)
上に引用したのは、金融記事の本筋から外れているものの、興味深い部分だ。
市場透明性や財政規律について、大統領の肉声
金融メディアとしてのブルームバーグが確かめたかったのは、主に以下のようなことだ。
MSCI指数が求める株式市場透明性への対応
財政規律の維持
金融政策の独立性
政府系ファンド「ダナンタラ」の使い途
これらのテーマ別に大統領の肉声を拾ってみると、以下のようになる。
MSCI指数が求める株式市場透明性への対応
1月にMSCIが「エマージング(新興国)」から格下げを検討すると発表し、インドネシア株が急落した。
プラボウォ大統領は、証券当局者たちを解任し、大富豪たちを非難した。
しかし、インドネシア株式市場への信頼は現在まで戻っていない。
MSCIが問題視しているのは、ほとんどの上場株銘柄で大きな比率を富豪層が保有していること。
業績予想などによる価格発見機能が働かない。
「私はただ、国民にとって最善だと思うことをしているだけだ」
「市場は私のことを理解してくれない」。
「軍人が経済を理解できるはずがない」と批評家たちは思っている。
「彼ら(MSCI)には3、4通の手紙を送ったのに、何の返答もなかった。
信じられますか?馬鹿げている。全くの愚行だ」
富裕層に対し、「腐敗した連中、泥棒どもを排除しなければならない」
財政規律の維持
フィッチ・レーティングスとムーディーズ・レーティングスは最近、インドネシアの格付け見通しを
ネガティブに引き下げた。
10年債利回りは2025年末に数年来の低水準を記録した後、再び上昇傾向にある。
大統領は、財政規律を堅持する、また、無料給食プログラムは維持する、と言っている。
「インドネシアの問題は歳入でも富でもない」
「問題は汚職だ。問題は非効率性だ。問題は経営管理の弱さ、監督の弱さだ」
「彼ら(格付けアナリスト)も人間だ。間違えることもある。いずれ分かるだろう」
大統領はブルバヤ財務大臣は楽観的であることを評価し、
「楽観的な人材が必要なのだ。悲観主義者は周りにいてほしくない。それは私の性分ではない」
金融政策の独立性
プラボウォ政権は1月に大統領の甥をインドネシア銀行(中央銀行)の副総裁に任命した。
大統領の意向が反映しやすくなり、金融政策の独立性が損なわれるとの懸念が出ている。
「責任ある立場に立つ者は、最も優秀な人材、そして信頼できる人材を探すものだ」
「シンガポールのリー・シェンロン(元首相)の奥さん(ホー・チン氏)が
テマセクの経営トップに任命された際、批判者たちは同様の懸念を表明したのか?」
政府系ファンド「ダナンタラ」の使い途
ダナンタラは、インドネシア国営企業すべての大株主として資産運用をしている。
隣国マレーシアの1MDBのような汚職スキャンダルに陥る可能性がないのか。
国内外の富豪層からは、民間部門に残る一部の国有資産の支配権を取り上げるのではと懸念もある。
「以前はめちゃくちゃだった。国営企業は誰も管理していなかった」
サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦の同様のファンドを例に挙げ、
「彼らは成功している。我々は成功例に倣うべきだ」
「真の大口投資家は、他の多くの国よりも優れた情報力を持っている」
「損失の責任は一切負いたくない」(損失を出すことは許さない、という意味か?)

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