マレーシア 25年予算案の目玉はフォレストシティ?

 

東南アジア株式新聞 2024年10月23日

  • 2日連続で円安なのに日本株安。日経平均株価は−0.80%。日本売りが心配になってきた。

シンガポール STI

マレーシア FBM KLCI

インドネシア IDX総合

タイ

SET

香港

Hang Seng

3600.78

+0.37%

1641.53

-0.06%

7787.57

-0.02%

1470.32

-1.24%

20760.15

+1.27%

マレーシア 25年予算案の目玉はフォレストシティ?


マレーシアのアンワル首相は10月18日、議会に2025年度予算案を提出した。

歳出総額は4210億リンギと24年修正予算案と比べ3%増加し、過去最大の規模となる。

経済成長率は24年に5%程度、25年も5%前後を見込むが、経済成長に伴う税収増で、歳入が24年比5%増の3397億リンギ(約11兆8000億円)に増える。

補助金見直しなどで歳出増を抑制し、国内総生産(GDP)比の財政収支は3.8%の赤字と6年ぶりに3%台に低下する見通しだ。


    
予算案を説明するアンワル首相のX投稿(2024年10月19日)
予算案を説明するアンワル首相のX投稿(2024年10月19日)

(X投稿の日本語訳)

これは、昨日の2025年予算案のプレゼンテーションで、国民の生活費の問題に対処するために私が発表した支援と取り組みの1つです。



日本経済新聞の10月21日の記事:

マレーシア、経済特区・高度産業で成長加速 25年予算案

マレーシアのアンワル政権は2025年の予算案に、隣国シンガポールと共同で進める経済特区設置のほか、人工知能(AI)などの高度産業育成を盛り込んだ。外資誘致にも力を入れるなど矢継ぎ早の経済政策で27年にも「高所得国」入りの実現が視野に入ってきた。

アンワル首相は18日、25年予算案を公表した。歳出規模は4210億リンギ(約14兆3000億円)と過去最大となる。製造業の高度化を目指す産業政策「新産業マスタープラン2030」に2億リンギ、脱炭素政策に3億600万リンギを振り向ける。

南部ジョホール州に設ける「ジョホール・シンガポール経済特区」はシンガポール政府と年内に最終合意する見通しで、物流や医療、金融などの分野で産業振興や優遇措置を検討する。

アンワル氏は18日の演説で「投資や雇用を促進する優遇措置を年内に公表する」と述べた。ジョホール州では大型都市開発事業の「フォレストシティー」で資産家一族の資産を管理する運用会社の税金を免除する措置も予定する。



少し説明を加える。

新産業マスタープラン2030(New Industrial Master Plan 2030、NIMP2030)

NIMP 2030 は、製造業および製造関連サービス部門向けの産業政策で、2023年から7 年間で目標を達成するように設計されている。


1年目の達成度合いについては以下の記事がある。

The Star の10月22日の記事:

Manufacturing sector gains from NIMP 2030 | The Star

投資貿易産業省(Miti)は、新産業マスタープラン2030(NIMP 2030)の設定された主要指標のうち3つをすでに達成しており、初年度の目標を達成できると確信していると、同省のザフルル・アブドゥル・アジズ大臣は述べた。

2023年9月1日のNIMP 2030の開始後、2024年第2四半期の製造業部門の国内総生産に対する付加価値は、2023年の同時期と比較して4.7%(42億リンギット)増加し、雇用数は0.9%(20万人)増加したと同大臣は述べた。2024年第1四半期の製造業部門の平均給与は、前年同期と比較して201リンギット(前年比8.2%)増加した。


NIMP 2030では、MITIは2030年までに製造業の付加価値を5,875億リンギット、330万の雇用機会を創出し、平均給与を4,510リンギットに引き上げることを目標としている。



ジョホール・シンガポール経済特区(the Johor-Singapore Special Economic Zone= JS-SEZ)

シンガポール対岸のジョホール州の経済特区を対象に、マレーシアとシンガポールが共同開発プロジェクトを今年末までにまとめる予定だ。

未完の新開発都市フォレストシティは、その一部となる見込み。


関連記事としては以下。

Malay Mail の10月19日の記事:

Budget 2025 to boost Johor’s economic edge with special zones and key development projects, says MB | Malay Mail

昨日、アンワル・イブラヒム首相が提出した2025年度予算は、ジョホール州の経済競争力をさらに強化するものとみられている。

州首相(称号ダトゥク)オン・ハフィズ・ガジ氏は、ジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)とフォレスト・シティ金融特区(SFZ)に関わるインセンティブが目標達成に役立つと述べた。

「JS-SEZに関わる取り組みと、SFZフォレスト・シティを通じて提供される魅力的なインセンティブは、ジョホール州の経済競争力をさらに強化するだろう。

「さらに、南北高速道路(PLUS)の拡幅、スルタナ・アミナ病院2、洪水緩和計画(RTB)など、ジョホール州の開発プロジェクトの実施継続は、この州の住民に直接利益をもたらすだろう」と、同氏は本日の声明で述べた。



日経新聞記事の引用部分に書かれた主なプロジェクトは以上だが、予算案に盛り込まれたアイテムの中では、個人的には以下のことに興味がある。

VC強化とスタートアップ・エコシステム構築も予算案に盛り込まれた


https://belanjawan.mof.gov.my/pdf/belanjawan2025/ucapan/touchpoint-budget-en.pdf

財務省の2025予算案説明資料のPage 16 図
財務省の予算案説明資料のPage 16 図


18. ベンチャーキャピタルとスタートアップエコシステム

• カザナ・ナショナル(Khazanah)は、スタートアップ企業に投資する VC ファンドマネージャーを支援するために、今後 4 年間で総額 10 億リンギットを配分する National Fund-of-Funds (NFOF) を設立する、3 億リンギット

• 公務員年金基金(KWAP)は、Dana Perintis を通じて、今後 4 年間で 10 億リンギットを割り当て、地元のスタートアップエコシステムの開発を加速する、2 億リンギット

• クレイドル・ファンド(Cradle Fund)のプログラムにより、地域および世界規模で拡大する可能性が高いスタートアップを特定して支援する、5,000 万リンギット

• Cradle Fund は、イノベーションアクセラレータープログラムを通じて、政府系企業(GLC)と地元のスタートアップおよび企業の VC イニシアチブとの連携を強化するために、マッチング助成金を提供する、1,500 万リンギット

• マレーシア中央銀行(BNM)は、業界競争力を高め、外国人投資家を誘致するために、ファンドの総規模の義務に基づいて PE および VC ファンド管理会社を巻き込んだ外国為替管理ポリシーを促進する

• クアラルンプールのスタートアップ企業を誘致するための支援施設を提供、500万リンギット

• 起業家育成研究センター(CEDAR)の下で、中小企業向けのさまざまな起業家育成プログラム、200万リンギット

• 高価値セクターの中小企業の国際化のためのビジネス輸出プログラム(SME Bank)、500万リンギット

• 政府調達のための地元のR&Dイノベーションの利用を促進するためのDana Mudahcara MySTI –Catalystファンド、500万リンギット

• スタートアップエコシステムへの割り当て、以下を含む:

(a) Cradle Fund(2,450万リンギット)

(b) Malaysia Debt Venture(MDV)(技術取得および商業化スキーム – TACT 2.0)(3,000万リンギット)

(c) MDV (資金調達マイクロファンド保証制度 – テクノロジー

FMG) (RM1800万)

(d) マレーシア技術革新研究アクセラレーター (MRANTI) (RM500万)




カザナ・ナショナルの地元VC強化やスタートアップ・エコシステム育成については、このブログでの書いてきた。

予算案では、そうした政策が、政府系ファンド・政府系企業を総動員したプロジェクトに発展している。



その他、予算案の詳細な解説については、会計事務所のPwCやEYがリポートを公表している。

PwC:Budget 2025

EYhttps://www.ey.com/content/dam/ey-unified-site/ey-com/en-my/insights/tax/documents/ey-take5-budget2025-18oct-2024.pdf







































コメント

このブログの人気の投稿

建設途上で破産したニセコ高級ホテル La Plume、アジア系資本とは

2025年 ASEAN議長国としてのマレーシア

ペイシャンス・キャピタル・グループ(Patience Capital Group)、妙高でリゾート開発を進めるシンガポールの投資会社