インドネシアによる Temu 禁止、東南アジアに広がる波紋

 

東南アジア株式新聞 2024年10月15日

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インドネシアによる Temu 禁止、東南アジアに広がる波紋

インドネシア政府が10月初めに、中国の低価格 eコマースの Temu を禁止した。地元の中小の流通業・製造業を破壊する威力があると恐れたためだ。

圧倒的な量産・低価格で攻勢をかける Temu は欧州や米国でも禁止論が出ており、インドネシアが極端な保護主義政策を実行したわけではない。


その後、タイでも禁止論が出始めているなど、インドネシアの決断の波紋が広がっている。

だが、 eコマースの競争が激しい東南アジア諸国でも、Temu の影響はまだはっきりと見えているわけではない。

急速に東南アジア市場への浸透を図る Temu と地元のオンライン事業者との、東南アジアの消費者の心をつかむ競争はまだ序盤だ。

  
マレーシアでのTemuの画面、2024年10月15日撮影
マレーシアでのTemuの画面




CNA の10月3日の記事:

Indonesia bans e-commerce firm Temu over fears its small enterprises could be ‘destroyed’ - CNA

インドネシアが電子商取引Temuを禁止、中小企業が「破壊される」恐れがあるため

インドネシアは、国内の零細・中小企業に混乱をきたす恐れがあるため、電子商取引プラットフォーム「Temu」の禁止を維持すると、通信情報大臣のブディ・アリー・セティアディ氏は述べた。


この世界的なオンライン市場は、中国の人気オンライン小売業者ピンドゥオドゥオ(拼多多)も所有するPDDホールディングスによって運営されている。

インドネシア当局はここ数カ月、東南アジア最大の経済国へのTemuの参入を警戒してきた。


工場から消費者に直接製品を販売する同社のビジネスモデルは、仲介業者や販売業者を必要とするインドネシアの貿易規制に反すると、貿易省の国内貿易局長イシ・カリム氏は以前述べた。


ブディ大臣は火曜日(10月1日)ジャカルタで、インドネシアへのTemuの参入を認めれば経済と社会に損害を与える可能性があると述べた。


iNewsが報じたところによると、同大臣は「Temuは経済、特にインドネシアの零細・中小企業に損害を与えるので参入できません。我々はTemuにチャンスを与えません」と述べた。

「我々は、デジタル空間が社会の生産性と収益性を高めるもので満たされることを望んでいる。それが有害であれば、何の意味があるのか​​?我々はそれを禁止する。野放しにすれば、我が国の中小零細企業は破壊されるだろう」と彼は続けた。


その後、インドネシア政府は、Google とApple に対し、Temu アプリをインドネシア国内で扱わないように要請した。


インドネシアは昨年10月、やはり小規模な商店やユーザーデータを保護する必要性を理由に、TikTok Shopを禁止した。

TikTokは1月にインドネシアの電子商取引企業Tokopediaの株式75%を購入し、市場に再参入した。TikTokの看板が出ているが、プラットフォームはインドネシア企業が運営している、という建て付けだ。




Temu は、2023年 8 月にフィリピン、9 月にマレーシア、2024年 7 月にタイに進出した。


マレーシアでは、あまり大きな騒ぎになっていない。オンライン広告はよく見るが、どれだけ利用されているか不明だ。現時点では、Shopee と Razada が多く使われている印象だ。

個人的には、Temuはプッシュ広告が多すぎて邪魔だったので、一度スマホに入れたアプリを削除した。

(念のために。マレーシアではプッシュ広告がやたら多いアプリが結構ある。ユニクロ・マレーシアもプッシュ通知が多かったので、削除した。)


タイでは、地元流通業者からの不満や危機感がいくつかのニュース記事になっている。

Temu は、最近ベトナムなどへも進出した。


香港 South China Morning Post の10月11日の記事:

Discount shopping giant Temu enters Vietnam and Brunei as app faces ban in Indonesia | South China Morning Post

ディスカウントショッピング大手のTemuがベトナムとブルネイに進出、インドネシアでアプリが禁止される中

ピンドゥオドゥオの親会社PDDホールディングスが運営する国際ディスカウントショッピング・プラットフォーム「Temu」は、インドネシアがこの人気の電子商取引アプリを禁止する最近の動きを受けて、東南アジアでの事業拡大を目指してベトナムとブルネイに進出している。

しかし、ベトナムのTemuのウェブサイトを見ると、この地域で最も急成長している経済圏の一つへの同社の進出は明らかに急ぎすぎたようだ。現在、英語とクレジットカードおよびGoogle Payによる取引のみがサポートされており、ベトナムの大手モバイル決済サービスMomoはサポートされていない。

裕福なブルネイでは、Temuは英語と公用語のマレー語の両方で利用できる。人口45万人余りのこの小国は、豊富な石油とガスの埋蔵量により、世界でも最も高い生活水準を誇っている。



Temu がインドネシア参入を試みながら参入したタイ市場では、オンライン商店だけでなく地元製造業への打撃が心配されている。


The Bangkok Post の7月30日(火)の記事:

Temu disrupts Thai online retailers

Temu 進出でタイのオンライン商店が混乱

中国のオンライン小売業者Temuが月曜日にタイの電子商取引市場に参入したことで、安価な中国製品のタイへの流入はさらに拡大すると予想される。

この動きは、地元の電子商取引市場で価格戦争を煽り、Lazada、Shopee、TikTokに影響を与えるとともに、さらに多くの地元工場の閉鎖の可能性に対する懸念を煽ると予想される。

電子商取引の事業者たちによると、タイ政府は、特に規格外の違法な越境製品など、中国製品の流入を抑制するためにさらなる措置を講じる必要があり、一方で地元の中小企業は損失を避けるために販売目的での中国製品の輸入を停止する必要がある。



タイ Nation の10月10日の記事: 

 A ban on TEMU would be a bad idea, experts say

Temu 禁止は悪いアイデア、専門家が見解

専門家らは、タイに対し、中国の電子商取引プラットフォームTEMUを全面的に禁止するのではなく、両国間の貿易機会を高めるために厳格な基準を確立すべきだと提唱している。

この提言は、中国の電子商取引市場で重要な役割を果たすTEMUアプリケーションを禁止するというインドネシアの最近の決定に続くものである。

国際貿易開発研究所(ITD)のウィモル・パンコン副所長(学術担当)は水曜日、ポスト・トゥデイ紙に見解を述べ、タイは人口が少ないため、より大きな隣国を見習うべきではないと述べた。

同氏は自由貿易環境を維持することの重要性を強調し、厳格な基準の確立に重点を置くべきだと提案し、タイのソフトパワーが中国市場にうまく浸透する可能性を指摘した。




以下、参考情報。


中国発激安EC「Temu」はインフレ疲れの味方か デフレ輸出の先兵か 急成長のカラクリ - 日本経済新聞



市場データ会社 Momentum Works の市場リポート:

Ecommerce in Southeast Asia 2024 | Momentum Works

(以下、無料で読める記述の一部)


東南アジアの主要8つのeコマースプラットフォームの総GMV(流通取引総額)は、2023年に1146億米ドルに達し、2022年から15%増加した。

ベトナムとタイが最も急速に成長しているeコマース市場だが、インドネシアが最大のeコマース市場でこの地域のGMVの46.9%を占めている。

Shopeeは引き続きこの地域のトッププレーヤーであり、48%の市場シェアを維持している。TikTok Shopの年間GMVはほぼ4倍の163億米ドルになった。Tokopediaを買収した後、TikTok Shopは東南アジアで2番目に大きなeコマースプラットフォームになった。




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