トランプ関税が来ると、ASEANの経済成長にどんな影響があるのか? ーーOCBCリサーチが推計

 

東南アジア株式新聞 2024年10月31日

シンガポール STI

マレーシア FBM KLCI

インドネシア IDX総合

タイ

SET

香港

Hang Seng

3558.88

-0.88%

1601.88

-0.82%

7574.02

+0.06%

1466.04

+1.30%

20317.33

-0.31%

トランプ関税が来ると、ASEANの経済成長にどんな影響があるのか? ーーOCBCリサーチが推計

マレーシアのニュースメディアで、OCBC グローバル・マーケット・リサーチが10月30日に発表したリポートが話題になっている。

次の米国大統領にトランプ氏が再選され、対中国などの関税が引き上げられた場合、ASEAN諸国のうち、ベトナム、マレーシア、タイが大きく影響を受ける、とリポートは推計した。


各国の株式市場では、トランプ再選で恩恵を受ける銘柄を選んで投資する「トランプ・トレード」が盛んだ。

OCBCのリポートが正しいなら、ベトナムなど3カ国株式市場の代表指数ETFを売るべきだろうか?

私には分からないが、この推計リポートは来年の投資戦略を考える1つの材料だ。




以下、OCBC GLOBAL MARKETS RESEARCH の 2つのリポートを紹介する。

(なお、ASEAN 5 は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ。ASEAN 6 は、これに加えてベトナム。)



まずは概略から。

Research Monitor (November)  30 October 2024

https://www.ocbc.com/iwov-resources/sg/ocbc/gbc/pdf/research%20monitor/research%20monitor%20(november%202024).pdf

ASEAN 5

米大統領選の終盤が厳しい接戦となったことで、ASEAN 5 か国経済は宙ぶらりんの状態となっている。11 月 5 日の投票でドナルド・トランプ氏が再選された場合のさらなる関税実施について、3 つのシナリオを概説する。

  • シナリオ 1 :中国から米国への輸出品に 60% の関税が課される。

  • シナリオ 2 :ASEAN 諸国を含むすべての米国の貿易相手国に 10% の関税が課され、中国から米国への輸出品にも 60% の関税が課される。

  • シナリオ 3:ASEAN諸国を含むすべての米国の貿易相手国に 20% の関税が課され、中国から米国への輸出品にも 60% の関税が課される。


House View

弊社の見解では、中国から米国への輸出に60%の関税が課せられた場合、中国のGDP成長率は1.0ポイント低下する可能性がある。

シナリオ1 では、ASEAN 6 地域のGDP成長率は比較的影響を受けない可能性がある。実際、これらの経済は中期的に恩恵を受け続ける可能性がある。

ただし、シナリオ2と3では、ASEAN 6 のGDP成長率はベースラインと比較してそれぞれ0.7ポイントと1.3ポイント低下すると予想している。

具体的には、輸出の3分の1が米国向けであるため、ベトナムが最も影響を受けると予想。マレーシアとタイは開放度が高いため次に大きな影響を受けるが、インドネシアとフィリピンは内需志向が強いため、ベースラインと比較して成長の足かせは小さい。

これらのシナリオでは、これらの経済には景気循環に逆らう金融政策の余地がいくらかある。しかし、マレーシアとフィリピンでは、パンデミック前の水準に比べて財政赤字が依然として大きいため、財政拡大の余地はさらに限られる可能性がある。



シナリオ分析について詳しくは以下で、影響の大きい3カ国を見てみる。

    

OCBCのリポート(2024年10月30日)
OCBCのリポート


Assessing the impact of potential tariffs(ASEAN 30 October 2024)

https://www.ocbc.com/iwov-resources/sg/ocbc/gbc/pdf/regional%20focus/asean/asean.impact%20of%20tariffs.29oct24.pdf


(以下、概要のみ)

ベトナム

ベトナムの対米輸出は2023年の総輸出の27%を占め、2024年8月までの1年間で29%にまで上昇した。

製品別に見ると、ベトナムの対米輸出の45.3%は機械・電気機器(2022年)、総輸出の36.4%は繊維、衣料、履物、家具、玩具。

シナリオ1では、ベトナムのGDP成長は比較的抑えられ、2025年のGDP成長率は6.0%近く(ベースライン:6.2%)にとどまると予想。

シナリオ2と3では、GDP成長率はベースラインと比較して2.1ポイントと4.0ポイント低下すると予想。


マレーシア

2024年1月から8月までのマレーシアの対米輸出シェアは中国本土を上回った。

マレーシアの対米輸出は主に電子機器と機械部門に集中しており、対米輸出総額の約77%を占めている(2024年1月から8月)。

商品輸出は総輸出の約8%を占め、労働集約型輸出は対米輸出総額の7.5%を占めている。

GDP成長率は、シナリオ2ではベースラインから最大0.9ポイント、シナリオ3では最大1.5ポイント低下する可能性がある。

シナリオ1ではマレーシアの成長はわずか0.2ポイントしか影響を受けないと予想。


タイ

シナリオ2では2025年のGDP成長率が0.7ポイント低下し、シナリオ3では1.1ポイント低下すると予測。

シナリオ1では、GDP成長率はベースラインより0.2ポイント低下すると予想。

製品別に見ると、2024年(1月~8月)のタイの対米輸出の約59%は電子機器と機械で、次いでゴム、鉄鋼製品、貴金属などの商品および商品関連輸出が17.2%、労働集約型セクターが7.2%。





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