カンボジア拠点の金融犯罪グループ Huione について

 

カンボジア拠点の金融犯罪グループ Huione について

東南アジア株式新聞  2025年8月6日


カンボジアを拠点として活動していた巨大金融犯罪集団 Huion Group が表面的には同国から

消えたことになっている。

しかし、当局に組織が摘発されて幹部が拘束されたような話はまったくない。

今も、どこかで活動している可能性がある。


表題では金融犯罪グループと書いたが、Huione は詐欺集団の金融インフラだというのが正しい。

同グループは、決済、暗号通貨取引、違法な商品を取引できるオンライン市場を提供していた

(今もしているかもしれない)。


カンボジア、ミャンマー、ラオスなどに潜伏するオンライン詐欺集団がよく話題になる。

彼らはオンライン詐欺の実行役として働かせるため誘拐もしている。

そんな犯罪集団が活動を維持できるのは、金融インフラがあるためだ。

各国通貨の送金、決済から、暗号通貨やオンライン市場を使ってマネーロンダリング(資金洗浄)まで、

犯罪集団には欠かせないインフラだ。


Huioneの日本語表記を「フイオン」とするか決めかねたので、Huioneのままにしておく。

中文では 「汇旺」であり、ローマ字表記が「Haowang」となっている場合もあるようだ。






8月1日に公開されたブルームバーグの動画:


How a Billion-Dollar Cambodian Cybercrime Empire Was Built



Huione Group の概要を知るのに良いニュース動画だ。

Huione は、「ファイオン」と発音されている。

この動画の中で、プノンペンの Huione 本社だったビルから「Huioneの看板は消えた」と報告している。

表面的なことだけだろうというニュアンスを込めて、だ。




少し前には メッセージングアプリ Telegramが Huione をブロックしたというニュースが流れていた。

しかし、実態はHuioneはTelegram上で依然として活動していると言われている。


Bitcoinesensus の7月30日の記事:

Telegram Blocked Huione and Xinbi


Huioneグループは、以前のチャンネルを削除したにもかかわらず、Telegramでの活動を継続している。

2025年5月25日、Huioneは新しいチャンネル名で新しいTelegram IDを登録したが、

Telegramボットでは以前の「hw」識別子とHaoWangという名前を維持した。

本質的には、この自動ボットは同じ機能を実行しており、公開メッセージはVIPチャットとTudouに向けた活動を

示している。

これは、顧客基盤を維持し、外部からの圧力を軽減し、ベンダールーティングを継続するための試みと思われる。

さらに、以前はHuione Guaranteeを通じて事業を展開していたベンダーは、現在、

同一のウォレット接続とインフラストラクチャパラメータを維持しながら、Tudouを積極的に利用しています。


※ 記事タイトルに Huione と並んで登場する Xinbi Guarantee は、東南アジアの詐欺グループにサービスを提供する、中国語の Telegram ベースのマーケットプレイスだ。米コロラド州に登記した Xinbi Co. Ltd

が本社ということになっていた。

※ Tudou(土豆)は中国の動画共有サイト。

 

Telegramがチャンネルを削除したくらいでは、彼らの活動は止まらない。


似たような話は、カンボジアでの銀行免許についても伝えられている。


国際的な人権擁護団体 Business and HUman Rights Resource Centre の3月12日の記事:

マネーロンダリングや詐欺幇助などの違法行為の疑いで、Huione Payの銀行免許が取り消し

カンボジアの金融規制当局は、コンプライアンス違反を理由にHuione Payの銀行免許を取り消したことを

確認した。

これは通常、金融サービスに大きな混乱をもたらす兆候となる措置である。

しかし、物議を醸しているこの複合企業は、通常通りの業務を続けていると主張している。

カンボジア国立銀行は、違法なマーケットプレイス「Haowang Guarantee」(旧Huione Guarantee)を

運営するHuione Group傘下のHuione Payの免許を取り消した。

これは、既存の規制および規制当局の勧告に違反したためだと報じられている…

Huione Groupは、カンボジアで主に中国語圏の顧客を対象に、様々な金融および仮想通貨関連サービスを

提供している。

Ellipticのレポートによると、Huione Group傘下の企業はこれまでに少なくとも890億ドル相当の仮想通貨を

受け取ったという。

子会社のHuione Payは、全国に複数の支店を展開し、銀行サービスに加え、店頭および銀行アプリを通じて

仮想通貨の店頭取引も行っている。


たいていの国では、決済・送金などの金融事業者は、犯罪組織との取引は禁止されている。

見つけたら通報しなければならない。

取引自体がマネーロンダリングを含め犯罪そのものか犯罪に手を貸すことになるためだ。

カンボジアの規制当局もHouine Payの銀行免許を取り消した。


だが、それだけでHuioneが廃業したと信じる人は少ない。

カンボジアや近隣諸国のオンライン詐欺・誘拐組織が消え去っていない以上、

だれかが金融インフラを提供しているはずだからだ。




現在、Huioneが国際的にどう扱われているかを知るには以下の米国政府機関の発表が良いだろう。



米国財務省金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)の5月1日のリリース:

FinCEN、カンボジア拠点のHuioneグループをマネーロンダリングの主要懸念事項と認定

サイバー詐欺や強盗に対抗するための規則を提案

本日、米国財務省金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は、米国愛国者法第311条に基づき、

カンボジアに拠点を置くHuione Groupを主要なマネーロンダリングの懸念がある金融機関に指定し、

米国金融システムへのアクセスを遮断することを提案する調査結果および規則制定案(NPRM)を発出しました。


Huione Groupは、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)によるサイバー犯罪による資金洗浄、

そして東南アジアの国際犯罪組織(TCO)による兌換仮想通貨(CVC)投資詐欺

(通称「豚屠殺(pig butchering)」詐欺)やその他のCVC関連詐欺の重要な拠点となっています。

 Huione Groupがもたらすマネーロンダリングのリスクを考慮し、FinCENは、米国の金融機関に対し、

Huione Groupのために、またはHuione Groupに代わってコルレス口座またはペイアブル・スルー口座を

開設・維持することを禁止することを提案しています。


スコット・ベセント財務長官は、「Huione Groupは、北朝鮮や犯罪シンジケートのような

悪質なサイバー犯罪者が好んで利用する市場としての地位を確立しており、

彼らは一般の米国民から数十億ドルもの資金を盗み出してきました」と述べました。

「本日提案された措置により、Huione Groupのコルレス銀行へのアクセスが遮断され、

これらのグループが不正に得た利益をロンダリングする能力が低下します。

財務省は、悪質なサイバー犯罪者が犯罪計画から、または犯罪計画のために収益を確保しようとする

あらゆる試みを阻止することに引き続き尽力します」


この発表文は、Huione グループには以下のような組織が含まれると指摘している。

  • 決済サービス機関であるHuione Pay PLC

  • 仮想資産サービスプロバイダー(VASP)であるHuione Crypto

  • 違法な商品やサービスを販売するオンラインマーケットプレイスであるHaowang Guarantee


 FinCENの調査により、Huione Groupは2021年8月から2025年1月の間に、

総額で少なくとも40億ドル相当の不正資金をロンダリングしていたことが判明している。




Huioneグループとカンボジア政府との関係まで触れている記事としては以下が良い。


独DW の3月16日の記事:

カンボジアは組織的なサイバー詐欺を根絶することに真剣だろうか?

世界最大の違法オンラインマーケットプレイスを運営していると非難されているカンボジアに拠点を置く

複合企業の銀行部門が、カンボジア中央銀行によって銀行免許を取り消されたと、

ラジオ・フリー・アジアが先週報じた。

仮想通貨コンプライアンス企業エリプティックが昨年報じたところによると、

Huione GroupのTelegramマーケットプレイスであるHuione Guaranteeは、2021年以降、

最大220億ユーロ(240億ドル)の違法取引を処理しており、

世界最大の違法オンラインマーケットプレイスとなっている。

カンボジア国立銀行の広報担当者は、米議会が資金提供しているメディアであるラジオ・フリー・アジアに対し、

同グループの銀行部門であるHuione Payの免許取り消しは、

「既存の規制および規制当局が制定した可能性のある勧告」に違反したためだと説明した。


この記事には、興味深い話が多く書かれている。

  • 非営利団体である米国平和研究所(USIP)によると、サイバー詐欺産業の規模は

年間110億ユーロに上り、カンボジアの総経済生産高の約4分の1に相当する。

  • カンボジアは、緊密な同盟国である中国だけでなく、西側諸国政府からも、

この違法取引を撲滅するよう強い圧力を受けている。

  • Huione Payの取締役3人のうちの1人は、カンボジアのフン・マネ首相のいとこ、フン・トー氏。

  • Huione Groupはオンライン声明で違法行為の容疑を否定し、Huione Payは昨年、

自主的に銀行免許を放棄し、日本とカナダで新たな免許を申請中であると述べた。

  • 東南アジアの巨大な「豚の屠殺」サイバー詐欺産業

(詐欺師が恋愛詐欺や投資詐欺で被害者を「太らせる」ことを指す)は、

COVID-19パンデミック中に爆発的に増加した。

この地域の違法カジノ運営者の多くがオンライン詐欺に手を染めた。

  • USAIDの最新の人身売買対策報告書によると、カンボジアの多数の詐欺拠点で強制的に

働かされている人は、外国人を含む最大15万人に上る可能性がある。

  • カンボジア政府は長年、問題の存在を否定してきた。それどころか、違法産業に関する

情報漏洩の防止に注力してきた。



フン・マネット首相のいとこが関与していたのが本当なら、同首相やその父でカンボジアの最高権力者のフン・セン氏も知っていた可能性が高い。




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