タイ-カンボジア国境の衝突問題が混迷、タイ政権に危機
東南アジア株式新聞 2025年6月19日
タイ-カンボジア国境の衝突問題が混迷、タイ政権に危機
5月18日に起きたタイとカンボジア国境の軍事衝突問題が混迷している。
両国の長い歴史の中で、国境問題は珍しいことではなく、平和的解決手段の用意もある。
だが、どちらも国軍の権力が強く、安易な妥協はできそうにない。
つい最近まで両国の関係は良好だった。
4月にタイ首相がカンボジアを公式訪問し、両国は経済協力を約束したばかりだ。
両国とも、米国との関税交渉に苦慮している’仲間’でもある。
平和的に解決したいのは両国共通の本音だろう。
6月半ば、タイ首相の不注意な行動が思わぬ波紋を広げた。
ぺートンタン政権は崩壊する可能性が出ている。
タイ首相の6月11日のX投稿の一部:
本日は、副首相兼国防大臣、副首相兼内務大臣、第2軍管区司令官、そして代表団とご一緒しております。
タイ・カンボジア国境情勢を監視するため、スリン県カブチョン郡を訪問し、治安機関、県知事、関係政府機関
との会談、軍関係者や現地住民への訪問・激励を行いました。
政府は国家の主権を守る上で「平和的手段」の原則を堅持し、安全保障と外交の両面でチームとして協力し、
交渉し、団結して行動し、人々の生活に影響を与えることなく、国境沿いの状況を解決し、平和を回復します。
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ぺートンタン首相のX投稿 |
タイ-カンボジア国境の軍事衝突以降の主な出来事
5月28日早朝、タイ、カンボジア、ラオスの国境地帯「エメラルド・トライアングル」で、
タイとカンボジアの両国軍が衝突し、カンボジア兵1名が死亡した。
カンボジア国防省は「タイ軍がカンボジア軍基地であった塹壕に発砲し、兵士が死亡した」
タイ軍は「カンボジア軍が武器を使用し始めた後にタイ軍が応戦した」
5月29日、実質的なカンボジア国家指導者であるフン・セン上院議長(元首相)が、
「係争地はカンボジア領土だ」
6月1日、タイ王国陸軍報道官のウィンタイ・スワリ少将、フン・セン前首相の主張を否定
6月8日、タイ政府の声明「14日に合同国境協議会(JBC)を開く」
6月12日、カンボジアのフン・マネ首相がフェイスブック投稿、
「タイの過激派グループがカンボジアへの電力とインターネットの供給を停止すると脅迫している」
6月14~15日、JBC開催。タスクフォースを設置し、「6月下旬に地域国境委員会(RBC)を開く」
6月16日、フン・マネ首相「国際司法裁判所に公式書簡を送付した」
6月17日、
カンボジアはタイからの農産物の輸出を禁止
タイはタイ人が国境を越えてカンボジアのカジノ施設で働くことを禁止
カンボジア首相の6月18日のX投稿(全文):
あらゆる階層、あらゆる政治動向、あらゆる宗教のカンボジア国民の偉大な連帯の力が、
一つのカンボジアの精神の下に結集し、コ・ピッチ劇場前から独立記念碑までの「連帯行進」を通じて、
国境紛争を平和的に解決し、カンボジア王国の統一と領土保全を守るという王国政府と
カンボジア前線部隊の姿勢を支持しました。
熱心な参加に感謝の意を表したいと思います。
これは、王国政府とカンボジアの最前線部隊が国防任務を継続し、いかなる犠牲を払ってでも
カンボジアの領土保全を守るための大きな励みとなります。
プノンペン、2025年6月18日水曜日の朝
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フン・マネ首相のX投稿 |
タイ首相の電話がタイ政権崩壊の引き金になる可能性
CNAの6月18日の記事:
タイのペートンタン首相とカンボジアのフン・セン前首相の通話内容が流出、新たな緊張に
タイとカンボジアの関係は、水曜日(6月18日)、タイのペートンタン・シナワット首相と
カンボジアの有力者フン・セン前首相との電話会談が漏洩したことで、大きな打撃を受けた。
会談内容は、両国の緊張をさらに高めるかもしれない。
6月15日の電話会話では、ペートンタン首相はフン・セン前首相に対し、
国内からの圧力にさらされていると述べ、
国境に駐留するタイ軍司令官を含む「反対側」の意見に耳を傾けないようにと言ったという。
具体的には、フン・セン氏の発言を否定したタイの将軍について、
「彼はただカッコつけたくて、国家にとって役に立たないことを言っているだけで、
真に私たちが望んでいるのは平和です」と言った。
(CNAの映像ニュースでは、この部分の音声データを放映した。)
彼女はその後、記者団に対し、フン・セン前首相との会話は交渉戦術の一環であり、
タイ軍には何の問題もないと述べた。
一方、フン・セン氏は、メディアの取材に対し、
「電話の内容を紹介した80人のだれかから漏れたのだろう」。
タイのシナワット家もカンボジアのフン家も、政権の座に長いため、家同士の付き合いがある。
そのため、ペートンタン首相は、旧知の実力者フン・セン氏への電話によって、
手っ取り早く二国間問題の沈静化を図ろうとしたのだろうが、裏目に出た。
2024年8月に誕生したペートンタン政権は1年待たずに崩壊の危機に瀕することになった。
Free Malaysia Today の6月18日の記事(中身は国営ベルナマ通信):
タイ第2党が政権離脱、閣僚8人が辞任
タイの与党連合第2党であるブムジャイタイ党(タイの誇り党)は、政権からの離脱を発表した。
タイ通信社(TNA)は、同党の声明を引用し、閣僚8人全員が6月19日付で辞表を提出したと報じた。
TNAによると、
同党は、ペートンタン・シナワット首相とカンボジアのフン・セン前首相と国境紛争に関する電話会談で、
シナワット首相が自国の軍の「意思疎通の不全」を非難した内容が漏洩されたことを「有害な」行為とし、
これが政権離脱の引き金となったと報じた。
CNAの6月19日の記事
タイのペートンタン首相が謝罪、フン・セン元首相との通話漏洩で政権崩壊の危機
タイのペートンタン・シナワット首相は木曜日(6月19日)、
カンボジアのフン・セン前首相との電話会談が漏洩したことについて謝罪した。
この電話会談は国民の怒りを招き、タイ政権を崩壊の危機に陥れた。
連立パートナーが内閣から離脱したのを受け、
タイでは、首相の辞任もしくは総選挙の実施を求める声が高まっている。
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